石原明の「知的経営の切り口」 | 経営者会報 (社長ブログ)
企業を発展させるための経営のヒントについて、独自の切り口で紹介します。
2011年05月31日(火)更新
『ぴあ』首都圏版の休刊とマーケットの変化
すでに昨年6月には中部版が、同10月には関西版が休刊しており、首都圏版が休刊すれば、39年の歴史を持つ情報誌『ぴあ』すべてが休刊することになります。
ちなみに上の画像は、1972年の『ぴあ』創刊号の表紙です。『ぴあ』は、当時まだ学生だった矢内廣社長らが創った、画期的なエンタメ情報誌でした。
インターネットなどまだない時代には、この『ぴあ』を頼りに、見たいライブや劇団のチケット発売日には、徹夜をしてプレイガイドへ並んだり、何度もリダイヤルしながら必死で電話予約をしたり・・・チケットをゲットするにも、たいそうな“努力”が必要だったのです。
また、『ぴあ』がオススメするマニアックな劇団などを、だまされたつもりで観てみたら結構面白かった、なんて経験をした人も多かったと思います。アングラ劇団などは、ある意味『ぴあ』が育てたと言えるかもしれません。
当時の学生にとって、『ぴあ』はデートのためのバイブルであり、若者文化の象徴であり、単なる雑誌を超えた“特別な”存在だったのです。その結果、『ぴあ』は就職したい企業ランキングに名を連ねる人気企業にもなりました。
月刊誌として誕生した『ぴあ』は、まもなくあの独特の表紙イラストを及川正通氏が描くようになってからますます人気が高まり、発行サイクルも隔週刊へ。一時は53万部まで部数を伸ばし、やがて首都圏版は週刊誌となります。
しかし、インターネットの登場で時代が変わったのです。ネットで情報が得られ、しかもチケット予約も簡単にできるようになったことから、最近の発行部数は、約6万部まで落ち込んでいたようですね。
もちろん同社も「@ぴあ」というネット事業も展開していますが、一時代を築いたある種のプライドのようなものが、媒体の移行に歯止めをかけたように見えます。
よく「世代間ギャップ」などと言いますが、私たち世代にとってはこれだけ思い入れの深い『ぴあ』でも、若い世代に「ぴあ、読んでる?」なんて聞こうものなら、「はっ?何のことですか??」なんて言われるのがオチです。
マーケットにおいては、たとえどんなに人気があるモノでも、ある年代で“ブツッ”と切れる、という現象はよく起こります。
そう考えると、企業は売れている商品があるうちから、第二・第三の選択肢を持って、対策を立てておかないとならないことがよくわかります。しかし、一世を風靡するような人気商品を持ってしまった企業は、得てして「次の一手」が遅れてしまうものなのです。
『ぴあ』休刊のニュースを見て、そんなことを考えてしまいました。「人の振り見て・・・」じゃないですが、経営者として肝に銘じたいものです(@^^)/~~~
2011年05月20日(金)更新
シェアが固定化してしまっている業界での逆転方法を考える
普段なら「仕方ない」とあきらめてしまうような問題でも、経営者の考え方ひとつで活路が見出せたりするものです。というわけで、今回は「上位1位2位の企業が圧倒的なシェアをもつ業界」での逆転方法を考えてみました。参考にしていただけるとうれしいです(*^_^*)
== 質 問 ==
上位1位2位の企業が圧倒的なシェアをもつ業界におります。シェアが固定化してしまっている業界での逆転方法を教えてください。
== 回 答 ==
答えは、業界の常識を変えるような試みで“競争の土俵を変える”ことです。これをヒントに考えてください。
== 解 説 ==
現状でマーケットのシェアが明確に決まってしまっていて、後発の会社が勝てそうにない場合に取る戦略ですが、単純な価格競争や、技術的な競争戦略ではまったく歯が立ちません。
理由は、価格戦略を取っても、経済的な体力差があるので、こちらが価格を下げた場合、大手もそれに合わせて価格を下げられてしまったら、まったく勝ち目がなくなってしまうからです。
もちろん、圧倒的にこちらの価格を下げられる要素があり、大手がそれに追随できなければ可能ですが、現実的にはなかなか難しいと思います。
もし、価格戦略を取るなら、ある分野だけ特化した商品やサービスを作って、大手より高く売るという方法が良いと思います(でも、これでは逆転はできませんが・・・)。
価格戦略は、大手が他社をマーケットから追い出すためには有効ですが、反対は難しいということですね(ーー;)
それから、同様に技術競争でも、逆転となると、なかなか難しいということです。
では、どうすれば、大手を逆転できるかですが、ヒントとなるのは業界の常識を覆すような「競争の土俵を変えるアイデア」を出すことだと思います。
最近の例で解説すると、一番分かりやすいのが、携帯電話で圧倒的なシェアを持っていたNTTドコモに対して、ソフトバンクが仕掛けた戦略ですね。ソフトバンクはどうして勝ったかですが、それは、携帯電話の通話料を廃止して、会員制度のように変えてしまったことです。
電話は、通話の時間で課金するというそれまでの常識を、世間もビックリするほどドラステッィクに変えてしまいましたよね。これが“競争の土俵を変える”ということですが、だからこそあっという間にシェアは逆転してしまいました。
この方法は、既存企業が利益を上げている正にそのポイントを突いた戦略なので、先行企業は立ち往生してしまうような感じになってしまうと思います。
・・・というように、上位1位2位の企業の圧倒的なシェアが固定化してしまっている業界での逆転方法は、“競争の土俵を変える”ことしかないと思います。ぜひ、がんばってください(@^^)/~~~
いかがでしょうか? あなたはどうお考えになりますか(^^♪ 私の発行する週刊メールマガジン、『社長、「小さい会社」のままじゃダメなんです!』(購読無料)では、毎週メルマガ読者のみなさんからの質問にこんな感じでお答えしています。
これまでのQ&Aもバックナンバーにたくさんあるので、興味があればぜひ覗いてみてください。もちろん、質問も随時受付中です(*^^)/~~~
2011年05月13日(金)更新
サムライ魂を世界へ発信!? 「サムライファクトリー」の企業文化
温泉地にある老舗旅館のロビー? それともどこかの和食料理やさん?? ・・・いえいえ、れっきとした会社の「会議室」なのです。
この会議室には「砦(とりで)」という名前が付いているそうですが、会議室につながる通路にも、白い玉砂利が敷き詰められています。
こんな会議室を持つ会社は、「サムライファクトリー」。「ニンジャ・ツールズ」というホームページ運営支援サイトで、個人ユーザー向けにブログのテンプレートやアクセスカウンターなどのツールを提供し、230万人を超すユーザーを持つ最先端のIT企業です。
ちなみに下の画像は、ビジュアル系バンドのメンバー紹介ではありません(笑)。メイクとコスチュームをバッチリきめて、スタッフ紹介ページをつくる懲りようです。
さらに会社案内は「巻物」風につくられていて、「モノづくりの力で世界中に幸せと感動を届ける」という熱い思いが込められています。
同社の社員60名のうち、約1割が外国人だそうですが、日本の「サムライ」に興味を持つ外国人は多いですから、入社を希望するかはともかく、海外メディアからの取材なども結構来るんじゃないでしょうか?
進化し続ける情報化社会の中で、自分たちの思いを経営理念という「言葉」にしたり、会社案内やホームページから「文章」で発信することが“当たり前”になりつつある今、同社のように会社の『ビジュアル』を丸ごとつかって、自社の企業文化を発信していく姿勢はすばらしいと思います。
イメージ広告に多額の費用を投じるより、社屋の外装やオフィスの内装に凝るという選択肢もあるわけです。そこまでの費用を捻出できなくても、サイトの会社紹介ページや会社案内のパンフレットを作り替えるくらいなら、すぐにでも着手できるはず。
われわれ中小企業こそ、もっともっと“個性”を発信すべき時代です。この事例をよい刺激に、経営者の思いやユニークな発想を「ビジュアル(=視覚)」に落とし込んでみてはいかがでしょうか(@^^)/~~~
2011年05月06日(金)更新
全く違う業界から採用するときに気をつけること
採用に関しても、多くの経営者が悩みを抱えていると思います。今回は、ある税理士さんからの質問をもとに、違う業界から採用する場合に気をつけるべきことを考えてみました。よかったら、参考にしてください(*^^)v
== 質 問 ==
税理士事務所でシステム開発とWEBマーケティングができる人の採用を検討しています。全く違う業界の人を採用するときに気をつけることは何でしょうか? 教えてください。
== 回 答 ==
専門家と仲良くなって、入社時のスキルチェックをしてもらうこと、また業務に入ってからは、家庭教師になってもらうことが重要です。経営者はそういう専門家との人間関係を普段から構築しておくことが大切です。意識して人脈を広げておきましょう。
== 解 説 ==
経営者が分かっていない分野で専門分野のスタッフを採用する際に問題になるのが、まずスキルチェックの問題です。面接等の際に話していることが実際に出来るのかなど、確認しないで採用すると後でとっても大変なことになりますよね。
それに、そもそもしっかりした技術があるなら、一般的には全く違う分野に仕事を求めようとしないわけですから、この採用の人選にはかなり気を付けたほうがいいと思います(こういう採用は危険がいっぱいです)。
また、採用してから大変なのが、教育と支配(?)と言うか上下関係の構築の問題です。トップが出来ないことを部下がやれるとか、知っていることで起きる組織内の秩序の乱れは、経営上大事な仕事を任せている人間であればあるほど難しくなっていきますので、変な関係が出来上がってしまったら、なかなか直せないと考えておくことが必要です。
さらに、その人間がやっていることが、他社と比べて勝っているのか劣っているのかなども経営の競争や効率に大きく影響しますので、常にチェックできる状況を作っておく必要があるということです。
こういう場合にどうすれば良いかですが、私は事前に専門家の知り合いを作っておいて、入社時のスキルチェックをお願いしたり、定期的に面談等をしてもらって成長を確認してもらう、必要ならば教育してもらえると良いと思います。
専門スタッフにしても、社長の関係者に自分の分野の専門家がいると分かると、良い意味で緊張するし、組織内で変な特権を持つなどという関係を作れないことになりますので、リスク管理にもなると思います(*^_^*)
もちろん、現状でそんな関係が出来ていないのであれば、専門家にお金を払って入社時のチェックや教育を任せるということになりますが、長期的には経営者は意識して人間関係を広げていって、いろいろな専門家とのネットワークを構築しておくことが重要だと思います。
今回質問されている方ですが、税理士事務所の方なので、あなたの仕事がそもそも専門分野ですから、この方法はとってもやりやすいと思います。
経営者が経理に明るくなかった場合、その会社の経理スタッフのスキルチェックや教育は、お手のものですよね(*^_^*)
お互い協力し合っていきましょうと、システム開発&WEBマーケティングの専門家の方に言ってみてください。良い関係が作れると思います。
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ボードメンバープロフィール
石原 明(いしはら あきら)氏
僖績経営理舎株式会社代表取締役
AZ Collabo株式会社
ヤマハ発動機株式会社を経て、外資系教育会社代理店に入社。約6万人のセールスパーソンの中で、トップクラスの実績を収める。「セールス・マネージャー世界大賞」を受賞後、日本経営教育研究所を設立し、経営コンサルタントとして独立。中小企業から大企業まで、業種や企業の規模を問わず幅広いコンサルティング活動を行っている。毎年の講演回数は100回以上。ビジネスの発想力やマーケティング力を開発・育成する「新経営戦略塾」には1000人が登録し学び、全国延べ4500社が参加。
2万人の読者を抱えるメールマガジン『石原明の「新経営戦略塾」』や、独自の視点で経営を綴るブログ『石原明の経営のヒント』も執筆中。大人気Podcast番組『石原明の経営のヒント+(プラス)』は累計ダウンロード数6000万回を超えている。著書に、累計30万部を超え『営業マンは断ることを覚えなさい』(三笠書房)、『「成功曲線」を描こう。』(大和書房)、『トップ3%の会社だけが知っている儲かるしくみ』(KADOKAWA)などがある。
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