石原明の「知的経営の切り口」 | 経営者会報 (社長ブログ)
企業を発展させるための経営のヒントについて、独自の切り口で紹介します。
2008年11月28日(金)更新
納豆容器に新風!? 「金のつぶ あらっ便利!」が好調
その名も「金のつぶ あらっ便利!」という商品なのですが、パッケージを見直したと言ってもデザインや材質といった外観の話でなく、なんと!納豆の表面を覆っていた薄いフィルムや、タレやからしを入れた小袋をなくしてしまったのです(@_@;)
その代わりに、上記のようなゼリー状のタレが容器の一角に入っていて、食べる時はこのゼリー状のものを納豆に混ぜていただきます。
これまで、納豆の乾燥を防ぐために採用されていた薄いフィルムも、いざ食べるときになると、なんとなくベトベトしてじゃまでしたよね。また、タレやカラシの小袋を開けるときも、「手が汚れてイヤ」という声が多かったみたいです。
こんなふうに、消費者が納豆を食べるときに感じる小さな不満をみごとに解消したことにより、今年(2008年)9月から新パッケージでの販売を始めたところ、発売後2ヶ月で6千万食と、目標を上回る好調ぶりみたいです(*^^)v
時に、消費者の「エコ」意識も相当高まっていますが、タレの小袋とフィルムをなくしたことで、家庭から出るゴミを年間で約45トン削減できるとの試算もあります。
商品自体を変えずとも、パッケージを見直すだけで売り上げが上がるという点では、とてもおもしろい事例だと思いが、単なる思い付きではなく、同社では2006年から「納豆革命プロジェクト」を発足させ、真剣に取り組んできたのだそうです。
こうして、ふたを開けて、はしで混ぜるだけで食べられる納豆の開発が始まったわけですが、最初はタレを容器の底に入れてから納豆を上に重ねる方式を考えたものの、納豆がタレを吸い込んでしまって、なかなかうまくいかなかったのだそうです。
その後、容器の試作を百種類以上作って研究を重ねたそうですが、それがこんなカタチで実を結ぶと、開発担当者も相当うれしいと思います。
ありとあらゆるバリエーションが登場している納豆という成熟市場にさえ、まだまだ起死回生の策があったのです。この事例を参考に、ぜひ自社商品を「パッケージの改良」という視点から、検討しなおしてみてはいかがでしょうか(@^^)/~~~
2008年11月21日(金)更新
自宅に懐かしのジュークボックスを♪ セガトイズの「ホームジュークボックス」
商品サイトも、とても上手に作ってあるので、下記の画像をクリックして、まずはぜひその世界感をお楽しみください♪
少子化傾向にともなって、玩具各社は数年前から、“大人向け”の商品の開発に躍起になっています。以前も、「グランドピアニスト」という商品を取り上げたことがありますが、こうした商品を出すには、「どこまで本気でこだわったものづくりが出来るか」が勝負になってきます。
この「ホームジュークボックス」も、1950年代から1970年代にかけて米国のWURLITZER社が製造・販売した通称「樽型」(WURLITZERタイプ)をモチーフにしたミニチュアモデルになっていて、レコードをターンテーブルに載せるアクションまでをもリアルに再現しているんです!(^^)!
針がレコードに触れたときの“チクチク音”やアームの動作音なども忠実に再現しているのには、ちょっとびっくりしてしまいます。内臓された20曲の楽曲も、ユニバーサルミュージック社厳選のオールディーズで、ルイス・アームストロングの「この素晴らしき世界」やフォー・エイセスの「慕情」など、古き良き時代への郷愁を誘う曲ばかりです。
さらに、本来のジュークボックスのように100円硬貨を入れて聴きたい曲を再生する「コインモード」まで付いていて“本物っぽさ”を盛り上げるうえ、自分の好きな音楽データが入った別売りのSDカードを本体に挿入して再生することもでき、これで価格は29,400円。50代~60代をターゲットに、年間2万台の販売を目指すそうです。
決して、マスマーケットを狙った商品ではありませんが、あくまで「本物っぽさ」にこだわることで、コアなターゲット層には、確実にヒットすることでしょう。ここまでこだわったものづくりをするからこそ、人の心に響くのです。ぜひその「開発レベル」の高さを知ってください。
経済環境が悪化するなか、われわれ中小企業は、「欲求市場」に向かうべきだという話を、私は最近よくしているのですが、マスマーケットを狙い価格競争に巻きこまれていくようなビジネスモデルではなく、規模は小さくとも、「これじゃなきゃダメ!」とお客さんが名指しで飛んでくるような商品やサービスの開発に力を入れるべきだと思うのです(*^^)v
冒頭で見ていただいた商品サイトも、動画を使ってこの商品の持つ世界感を上手に表現していますが、こうしたWEB戦略をとることで、マスメディアに莫大な広告費を払うことなく、商品の価値やストーリーを発信していくことができるわけですから、われわれも大いに参考にすべきでしょう。
そういえば、「セガトイズ」の前身は、米国からジュークボックスを輸入・販売する会社だったそうですよ。どんな会社にも歴史があるものですが、そのノウハウがどこで役に立つかわかりませんよね。こうしたノウハウも、すべて会社の大事な「資産」です。
来年にかけて、世の中はますます厳しくなりそうな気配ですが、ぜひ冷静に自社の持てる「価値」をみなおし、とるべき戦略を固めてください(@^^)/~~~
2008年11月14日(金)更新
1杯3,000円のラーメン!? 世の中と逆に舵を切る「藤巻激城」とは
ラーメン界は浮き沈みの激しい世界で、毎年の“流行の味”に乗り遅れると、パタリと客足が途絶えてしまうもののようです。なんでも、今年は「とんこつ魚介系」がブームみたいですが、各店がしのぎを削るなか、そんな戦いは“どこ吹く風”とばかりに、全くの“別次元”にいるラーメン店があるのです。
そのラーメン店とは、東京は中目黒にある「藤巻激城」というお店なんですが、住宅街のなかの極めてわかりにくい場所にある、まさにちょっとした“お城”のようなお店みたいです(*^_^*)
昨年(2007年)の11月にオープンしたこの店は、40坪のフロアーにたった8席のカウンターしかなく、メニューは「1杯3,000円」のラーメンが3種類のみ。ただし、4人以上で3日前に予約をすれば、1杯1万円の究極のラーメンも食べられるそうです(――;)
一瞬、「こんな高いラーメン誰が食べるんだ?」などと思ってしまいそうですが、オープン当初からラーメン通の間で話題になり、今年の9月からは「完全予約制」にしたほどです。完全予約制のラーメン屋さんなんて、聞いたことないですよね?
じつは店主の藤巻さんは、16歳で料理の世界に入り、中華畑で腕を磨いてきた人物で、2年前に池尻で始めたラーメン店は、超人気店となりました。世界3大スープのひとつでもあるタイの「トムヤムクン」をベースにしたそのラーメンは、たびたびマスコミにも登場し、店には連日行列が絶えなかったそうです。
ところが、ふつうの店主なら喜ぶだろうその現象を前に、藤巻さんは「客を並ばせたくない」と強く思ってしまったのです。そこからがまたユニークなのですが、店を拡大するのではなく、真逆に舵を切りました。
藤巻さんがとった戦法は「値上げ」。1杯800円だったラーメンを、1,500円にまで値上げしたそうです。その後、いったん池尻の店を閉店し、コンセプトを徹底的に練り直し、味に磨きをかけて「1杯3,000円」のラーメンで再出発したというわけです(*^^)v
誰にでも真似できる業態ではないかもしれませんが、多店舗展開を狙わず、藤巻さん本人がずっと店に立っておいしいラーメンを作っていくなら、経営的にも十分成り立つと思います。
もはや、ラーメン界でさえも、規格品を量産する時代ではないのかもしれませんね。ますます激化する「価格競争」とは無縁のこうした世界があることも、経営者としてぜひ知っておいてください。
自社製品の品質に自信がある会社は、この事例をヒントに、「思いっきり高い商品を限られたお客さんに売る」という戦略も視野に入れるべきかもしれません(@^^)/~~~
2008年11月10日(月)更新
就活動の次は“婚活”!? 言葉がマーケットを創る
今どきの学生たちは、就職活動を略して「就活(シュウカツ)」と言いますが、その結婚バージョンというわけで、つまり、就職するために就職活動が必要なように、結婚するためには「結婚活動」を積極的に行う必要がある、とされているのです。
こんな言葉、いつできたのかと気になって調べてみると、どうやらこれは、家族社会学者の山田昌弘さんと少子化ジャーナリストの白河桃子さんの共著、『「婚活」時代』からブレイクしたもののようです。この本では、結婚と就職がよく似たものであることが説明されています。
そもそも昔の学生たちは、卒業が近づくと、高校の就職指導の先生が世話を焼いてれたり、大学なら研究室やゼミの先輩が紹介してくれたりして、たいした就職活動をしなくても、みなそれなりに就職先が決まっていったものなのです。
結婚にしても、近所には「世話焼きおばちゃん」みたいな存在が必ずいて、お年頃になると、どこからともなくお見合い話が舞い込んだりしたものです。
しかし、今ではすっかり状況も変わり、就職先も結婚相手も「自己責任」で見つけないといけない時代になったということです。
そんななか、「婚活アドバイザー」なる職業まで誕生しているみたいですが、「婚活」という言葉が生まれたことで、そこに確固たるマーケットが出来上がっていくのがおもしろいと思いませんか?
まず、この「婚活マーケット」に飛びついているのが、結婚情報サービス(いわゆる結婚相談所のようなものです)業界です。試しにネットで検索してみてください。上位にはずらーっとスポンサーリンクが並びます。
今後もこの「婚活」という言葉をキーワードにして、さまざまなビジネスが誕生していくのではないかと予想がつきます。こんなふうに、人の心にひっかかる「言葉」には、マーケットを創り出すパワーがあるということです(*^^)v
ということは、われわれ中小企業でも、「言葉」を生み出すことで、マーケットのトップに立てる可能性があるということですから、経営者は、そのあたりを真剣に研究すべきだと思います。
しかしながら、この「婚活」というキーワードに強く反応しているのは、もっぱら女性たちのようです。男性たちは、「いつかはできると思うが必然性を感じない」とか「女性と一緒に過ごすよりも楽しいことがある」などと考える人が多く、なかには、「生きてる女はめんどくさい」などという声まであるみたいです(――;)
満50歳になるまで一度も結婚したとことのない人の割合を示す数字を「生涯未婚率」(この言葉もかなりインパクトがありますね……笑)と言うそうですが、2005年の国勢調査では、女性の生涯未婚率が6.8%なのに対し、男性は15.4%と2倍以上の開きを見せているのです。
どうやら、「婚活」という言葉が、男性たちの心をつかむためには、もうひと工夫必要なようですね。あなたなら、どんなアイディアがありますか(@^^)/~~~
ボードメンバープロフィール
石原 明(いしはら あきら)氏
僖績経営理舎株式会社代表取締役
AZ Collabo株式会社
ヤマハ発動機株式会社を経て、外資系教育会社代理店に入社。約6万人のセールスパーソンの中で、トップクラスの実績を収める。「セールス・マネージャー世界大賞」を受賞後、日本経営教育研究所を設立し、経営コンサルタントとして独立。中小企業から大企業まで、業種や企業の規模を問わず幅広いコンサルティング活動を行っている。毎年の講演回数は100回以上。ビジネスの発想力やマーケティング力を開発・育成する「新経営戦略塾」には1000人が登録し学び、全国延べ4500社が参加。
2万人の読者を抱えるメールマガジン『石原明の「新経営戦略塾」』や、独自の視点で経営を綴るブログ『石原明の経営のヒント』も執筆中。大人気Podcast番組『石原明の経営のヒント+(プラス)』は累計ダウンロード数6000万回を超えている。著書に、累計30万部を超え『営業マンは断ることを覚えなさい』(三笠書房)、『「成功曲線」を描こう。』(大和書房)、『トップ3%の会社だけが知っている儲かるしくみ』(KADOKAWA)などがある。
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