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2010年12月21日(火)更新

「ゴパン」に見る“世の中にない商品”を売り出す法

早いもので、今年も残すところ半月となりました。マスコミ各社でも「今年のヒット商品」みたいなランキングを発表したりしていますが、最近の新商品のなかでも、私が注目しているのが『ゴパン』です。

三洋電機が今年(2010年)11月に発売した、世界初! お米からパンがつくれるホームベーカリー(実勢価格49,800円)ですが、当初10月8日(毎月8日はお米の日だそうです)の発売を予定していたものの、発売前に予約が殺到したため、急遽、発売を一ヶ月延期したという商品です(*^_^*)


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いざ発売を開始してみると、初日に予約分だけで完売。その後の予約注文も、来年3月までの販売計画を上回るほどで、予約受付の一時中止を決断せねばならなかったほどの人気ぶりなんです(>_<)

もちろん、昨今の経済環境から、メーカー各社はなるべく在庫を持たない体制を取っているといった事情もありますし、「お客は並ばせろ」方式で、「売り切れ!」のニュースを販促に活かすという戦略を採る会社もありますが、この『ゴパン』に関しては、事前の地道なプロモーション活動が実った、と見るべきだと思います。

近年、小麦アレルギーを持つ方はもちろん、カロリーを気にする消費者が増え、小麦よりヘルシーな「米粉」を使ったパンやケーキもめずらしくなくなりましたが、まだ「米粉」そのものが手に入りにくい状況もあることから、同社は炊飯器のごとく「米粒」を入れておけば「パン」が焼きあがる…という画期的なパン焼き器を開発したのです。

なんでも開発には5年の歳月を要したそうですが、米粒から直接パンをつくるには、まず米を水で柔らかくし、さらに削ってペースト状にする必要があります。その上で生地をこねていくわけですが、その複雑な作業を、一つのモーター回転軸と異なる回転数で行う正逆回転機構を採用することで、この一台でお米からパンを作ることを実現したんだそうです。

しかし、米粒からパンができるなんて、初めて聞くと、ちょっと信じられない感じがしますよね。世の中にない商品は、それだけ売りにくいということです(-_-;)

そこで同社は、マーケティング本部を絡めて大々的にデビューさせる戦略を採りました。月に1~2度のリーダー会議を持ち、8つのワーキンググループでは、生産や販促計画を綿密に詰めていったようです。

都内に期間限定で『ゴパン』で焼いたパンを試食できるカフェを開いたり、新潟県魚沼市をはじめ、各地のJAと協力し、その土地のお米の味を生かした“ご当地パン”をつくるイベントを行ったり、都内の製菓・製パン材料店でデモンストレーションを行ったり…と、創意工夫を凝らしたプロモーションを展開していったのです。

また、通常の新商品プロモーションは、3~4ヶ月前から始めるようですが、こと『ゴパン』に関しては、10ヶ月も前からプロモーションに着手したそうです。その甲斐あって、発売前から多くのメディア露出に成功し、プログやツイッターでも随分と話題になっていたようです(*^^)v

常々私が教えているのは、「いきなり売るから難しい」ということです。もともとマーケティング思考の弱いわが国では、「いいものをつくれば売れる」という概念が根強く残っている面があり、商品が出来上がってから、初めてその売り方を考える会社も少なくありません。

そういった意味では、同社が「マーケットを先につくろう」と発想したことこそが勝因であり、とりわけ世の中にない商品を売り出すためには、この発想がキーになります。

来たる年も、われわれ経営者にとっては、厳しい経済環境が続くと思いますが、そんな時代だからこそ、新しいアイディアを持つ商品やサービスが強く望まれるのです。この事例を参考に、ぜひ勇気を持ってチャレンジを続けていきましょう(@^^)/~~~

2010年11月29日(月)更新

「福袋」進化系!? 2011福袋事情

今年も残すところ一ヶ月あまりとなり、しだいに年末ムードが色濃くなってきました。各百貨店では、来年の「福袋」の準備も進んでいるようですが、「お正月に列に並んで買うもの」と相場が決まっていた福袋も、時代とともに“進化”を遂げているようです(*^_^*)

まずびっくりしたのが、「ネット予約可能な福袋」。高島屋オンラインでは、12月下旬までネットで予約を受け付け、新春1月2日より順次配送するという「並ばない」福袋の販売を始めました。


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さらには、「年内販売型」の福袋も登場!同じく高島屋では、コートや手袋などの雑貨を詰め合わせた「年内販売型福袋」(1万~3万円)を販売しています。こちらは、中身の種類やサイズを選ぶこともでき、実際に試着できる売り場もあるといいますから驚きです(@_@;)

ここまでくると、「セール」や「バーゲン」といったいどこが違うのか・・・と思ったりしますが(笑)、「福袋」という言葉の響きに引き寄せられる消費者心理も、なんとなくわかるような気がします。

一方、老舗の三越でも、日本橋店は今年話題の坂本龍馬をかたどった純金製の像(約200グラム、280万円、1点限定)を用意したり、銀座店では「ターゲット別福袋」を用意したりしているそうです。

最近、お弁当を作る男性が増えていることから、「弁当男子福袋」として、曲げわっぱ弁当箱作りの体験や土鍋などを合わせた福袋(2万1000円、6点限定)などを販売する予定だとか。

いずれにしても、「福袋」というマーケットに対し、「並ぶのがイヤ」「中身が見えない」「趣味に合わないモノが入っている」という“不満要素”に対処していった結果、こんなふうに進化した福袋が生まれたのでしょう。

しかし、同時に「袋を開くときのワクワク感」を失っているのも事実。正月早々、お屠蘇気分で列に並ぶのも楽しみのひとつ、と考えることもできます。

もちろん、この事例のように、「自分の好きなものが選べる」という「現実的」なメリットを重視して福袋を進化させる道もありますが、並んでもらう時間に何らかの楽しい体験をしてもらうとか、福袋に「おみくじ」の要素を持たせて、今年の運勢を占ってもらうとか・・・「エンターテイメント性」を加味した進化も考えてみたらいいんじゃないでしょうか(*^^)v

あなたなら、来年に向けてどんな「福袋」をつくりますか? こうした思考のトレーニングは“経営脳”を鍛えるので、ぜひ忙しい仕事の合間に、楽しみながら発想してみてください(@^^)/~~~

2010年11月01日(月)更新

お風呂用スピーカーが販売台数50万個超のスマッシュヒット!?

秋の夜長、ゆったり湯船につかるのもいいものですが、最近ではお風呂で音楽を聞く人たちも増えているみたいです。

この「お風呂で使える防沫スピーカーPomme(ポム)」が、50万個を超すヒット商品になっていると聞いて、ちょっとビックリしてしまいました(@_@。


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失礼ながら、とりわけデザインがいいというわけでもなく、ごくシンプルな商品ですよね。もちろん、同様の商品も多数出ています。そんななかで、なぜ、この商品がこんなに売れたのか…。

その要因としては、まず標準小売価格を1000円(税抜)という買いやすい値段に設定したこと。音量調節などは、中に入れたiPodなどの携帯音楽プレーヤーで行うタイプのようですが、「防沫」という単一の機能に絞り込んだことで、この価格を実現したのだと思います。

他社がラジオなどの付いたデザイン性の高いスピーカーで行くのなら、真逆に舵を切るのも賢い経営判断です。今やほとんどの人が携帯音楽プレーヤーを持つ時代。「お風呂でも聞きたい」人は増える一方でしょうから、マーケットの将来性も十分ありますよね。

こんなスピーカーを持っていれば、音楽のみならず、語学などの勉強やポッドキャストをお風呂で聞くなんてことも可能です。

私が毎週配信しているポッドキャスト番組『石原明の経営のヒント+(プラス)』も、お風呂で聞くとまた格別かもしれません(笑)。

それはともかく、こうした何気ない商品でも、的を絞った商品開発と売り方しだいでは、確実にスマッシュヒットを飛ばすことができるのです。

相変わらず「モノの売れない時代」と嘆く経営者も多いですが、この事例を参考に、明るい気持ちで自社の戦略を見直してみてはいかがでしょうか(@^^)/~~~

2010年09月24日(金)更新

twitterのビジネスユースをガチャピンに学ぼう

twitterのビジネスユースについては、諸説入り乱れるところですが、じつは「ガチャピン」ほど、上手にtwitterを活用している人(?)はいないんじゃないでしょうか(*^^)v

先ほどあらためて確認したら、今現在のフォロワーは、なんと!796,786名。いよいよ80万人に届こうという勢いです。


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聞くところによると、「ガチャピン」のフォロワーの多くは歴とした社会人だそうですが、自分のタイムラインにずらっと並ぶビジネスチックなつぶやきのなかに、ガチャピンからの「今日はおうちでゴローン。」とか「博多なぅばい。」といったつぶやきを見ることで、癒されているオトナたちが相当いるみたいです(*^_^*)

もちろん、twitterとブログ「ガチャピン日記」との連動も秀逸で、こういった短いつぶやきのなかに、「てへへ。http://gachapin.fujitvkidsclub.jp/2010/07/2010730.html」という感じで巧みにブログに誘導するつぶやきが含まれています。

この日のブログの内容は「てへへへ。ムックとケンカしちゃった。」という内容だったのですが、つぶやきの3分後から「仲直りしてね!」というような応援コメントが続々200以上も集まるのです。またある日は、奈良にひとり修学旅行に行ったり、スノボをやったり、農園で種まきをしたり…と、アクティブに「ロケ」を決行している様子からは、ブログへの本気度が伺えます。

つまり、ガチャピンの「twitter×ブログ大作戦」は、片手間という域を超えた本気の取り組みなわけですが、その結果何が起こったかというと、自分で自分のキャラクターとしての価値を限りなく上げることに成功しました。

ご存じのように、ガチャピンはフジテレビ系の子供番組『ひらけ!ポンキッキ』に登場するキャラクターで、株式会社フジテレビKIDSの登録商標です。番組放送開始は1973年。そう考えるとガチャピンももう37歳になるわけですが(笑)、昨年から始めたtwitterの効果で、キャラクターグッズの売上げもかなり伸びているはずです。

また、最近ではガチャピンとコラボしたがる企業も増えていて、この夏には「ニコニコ動画」のライブライブイベントで、ガチャピンの音声をパソコンで合成して楽曲を歌わせることができるソフト「ガチャポイド」が発表されました。

このニュースは「ガチャピン“歌手”転向!?」などと、かなり大きくメディアにも取上げられていました。さらには、『笑っていいとも!』の「テレフォンショッキング」に登場するなど、タレントとしての価値までも上げつつあります。

昨今、好みの多様化で、キャラクタービジネスも難しくなってきているようですが、このガチャピンの戦略には、学ぶところが多そうです。とりわけ、オトナのファンを増やし、自らマーケットを拡げたセンスはさすがです。経営者として、ガチャピンの今後に、しばし注目してみてはいかがでしょうか(@^^)/~~~

2010年09月03日(金)更新

困難は“発想”で乗り切る!? 「就職祝い金」モデルが求人サイトを救う

近年、仕事探しには「インターネット」が欠かせない存在になっていますが、リクルート、インテリジェンスをはじめ大手がひしめく求人情報サイトのなかで、ベンチャー企業である「リブセンス」が急成長を遂げているのをご存じでしょうか?


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急成長の秘密は、そのビジネスモデルにあります。同社の運営する「ジョブセンス」は、2006年4月のサービス開始以来、求人広告の掲載は『無料』。実際に採用できた時点で初めて課金されるシステムになっているのです。

同社いわく「そもそも、ネットでは“情報はタダ”といった感覚が強いのに、求人情報を掲載しただけで料金が発生する課金方式には無理があるように思う」とのこと。言われてみれば当たり前ですが、ネットの「広告モデル」を敵に回すも同然ですから、なかなか勇気のいる決断だったと思います。

案の定、立ち上げ当初は求人広告集めに苦労したそうですが、しだいにこのシステムが理解され始め、クチコミなどで評判を呼ぶにつれ、求人の掲載件数は常時1万件、月間利用者数は300万人に達するまでになったのです。

しかし、規模が大きくなると、このビジネスモデルの思わぬ欠点が浮き彫りになってきました。課金するためには、その企業が「採用したかどうか」の後日調査が必要で、そこに膨大な手間や人件費がかかるわけです(-_-;)

悪気はないにしろ、日ごろの忙しさにかまけ、企業側から進んで採用の事実を報告してくれる例は極めて少なかったのでしょう。そこで同社が編み出したのは、「採用された人にお祝い金を払おう!」というモデルです。

この「就職祝い金制度」を設けたことで、採用された本人から、確実に自己申告が受けられるようになったのです。金額は1000円から2万円までのようですが、採用の実態を調査するためにかけていた手間と費用にプラスして、このモデルそのものが生み出す「競争力」を考え合わせれば、とても賢い選択だったのではないでしょうか。

こんなふうに、目の前の課題を乗り越えるには、経営者が常識にとらわれない自由な発想と知恵を持てるかどうかにかかっています。この事例を参考に、あらためて自社の課題と向き合ってみてはいかがでしょうか(@^^)/~~~
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