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2011年05月31日(火)更新

『ぴあ』首都圏版の休刊とマーケットの変化

先日、ちょっとさみしいニュースを目にしました。あの『ぴあ』の首都圏版が、ついにこの7月(2011年7月21日発売号)で休刊するというのです(――;) 
 
すでに昨年6月には中部版が、同10月には関西版が休刊しており、首都圏版が休刊すれば、39年の歴史を持つ情報誌『ぴあ』すべてが休刊することになります。
 




 
 
 
 
 
 
 


  
ちなみに上の画像は、1972年の『ぴあ』創刊号の表紙です。『ぴあ』は、当時まだ学生だった矢内廣社長らが創った、画期的なエンタメ情報誌でした。
 
インターネットなどまだない時代には、この『ぴあ』を頼りに、見たいライブや劇団のチケット発売日には、徹夜をしてプレイガイドへ並んだり、何度もリダイヤルしながら必死で電話予約をしたり・・・チケットをゲットするにも、たいそうな“努力”が必要だったのです。
 
また、『ぴあ』がオススメするマニアックな劇団などを、だまされたつもりで観てみたら結構面白かった、なんて経験をした人も多かったと思います。アングラ劇団などは、ある意味『ぴあ』が育てたと言えるかもしれません。
 
当時の学生にとって、『ぴあ』はデートのためのバイブルであり、若者文化の象徴であり、単なる雑誌を超えた“特別な”存在だったのです。その結果、『ぴあ』は就職したい企業ランキングに名を連ねる人気企業にもなりました。
 
月刊誌として誕生した『ぴあ』は、まもなくあの独特の表紙イラストを及川正通氏が描くようになってからますます人気が高まり、発行サイクルも隔週刊へ。一時は53万部まで部数を伸ばし、やがて首都圏版は週刊誌となります。
 
しかし、インターネットの登場で時代が変わったのです。ネットで情報が得られ、しかもチケット予約も簡単にできるようになったことから、最近の発行部数は、約6万部まで落ち込んでいたようですね。
 
もちろん同社も「@ぴあ」というネット事業も展開していますが、一時代を築いたある種のプライドのようなものが、媒体の移行に歯止めをかけたように見えます。
 
よく「世代間ギャップ」などと言いますが、私たち世代にとってはこれだけ思い入れの深い『ぴあ』でも、若い世代に「ぴあ、読んでる?」なんて聞こうものなら、「はっ?何のことですか??」なんて言われるのがオチです。
 
マーケットにおいては、たとえどんなに人気があるモノでも、ある年代で“ブツッ”と切れる、という現象はよく起こります。
 
そう考えると、企業は売れている商品があるうちから、第二・第三の選択肢を持って、対策を立てておかないとならないことがよくわかります。しかし、一世を風靡するような人気商品を持ってしまった企業は、得てして「次の一手」が遅れてしまうものなのです。
 
『ぴあ』休刊のニュースを見て、そんなことを考えてしまいました。「人の振り見て・・・」じゃないですが、経営者として肝に銘じたいものです(@^^)/~~~