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2011年04月25日(月)更新

「プロボノ」という新しい社会貢献のかたち

突然ですが「プロボノ」ってご存じですか? 自分がこれまで仕事上で経験してきたことやその知識・技能を活かして行うボランティア活動のことで、ラテン語の「Pro Bono Publico(公益善のために)」を語源とした造語です。

もともとは、アメリカやイギリスの弁護士たちが始めた無料相談からはじまった活動のようですが、資金や人材不足に悩むNPOや社会起業家たちを、「自分の持っている能力で」支援しようという活動なのです。
 


 
 
 
 
 
 





こうして2000年代以降、欧米から広がったこの「プロボノ」は、金儲け主義への反発もあって世界的に拡大し、日本でも特定非営利活動法人である「サービスグラント」が、プロボノ希望者を募っているのですが、昨年(2010年)の登録者数は約650人と、前年の2.5倍に急増したそうです。
 
また、企業が積極的に「プロボノ」活動をするという動きも出てきているようで、NECでは昨年の夏よりプロボノチームを若手社員15人で編成し、採血による健康診断事業を展開する「ケアプロ」と、農業の収益性向上を目指す「オリザ」を支援しています。
 
ケアプロもオリザも、それぞれの業界内の構造改革を目指す社会起業家がつくったベンチャー企業ですが、NECチームは、ケアプロの顧客情報のデータベース化や、診断結果をグラフ化し、健康状態に応じて医療機関を紹介する携帯電話向けのプログラム開発などを行いました。
 
一方、オリザに対しては、休日に栽培現場を訪れて農業専門家たちにも取材を行い、ホームページを刷新するなどの支援を行いました。NECの社員さんたちも、自分の仕事が目の前でかたちになることに手ごたえを感じているようです。
 
同社の他にも、ゴールドマン・サックス証券が女性社員中心のチームをつくって、教育・子育て関連のNPOの財務面の見直しを支援したり、日本IBMが教育関連のNPOを支援したりという動きが広がっています。
 
大企業で働く人たちは、どうしてもエンドユーザーと接する機会が少ないですから、「自分のしたことで、目の前のお客さんが喜ぶ」という、仕事の喜びの本質に触れにくい部分もあるでしょう。そう考えると、この「プロボノ」の活動が、社員教育的な意味合いをも兼ね備えるかもしれません。
 
これまで「支援」というと、「資金援助」というかたちが一般的だったと思いますが、それぞれの専門家たちが自分の能力を出し合って社会に貢献できたら、すばらしいことだと思います。
 
今回の震災に対してもそうですが、何も「義援金」を募るばかりが社会貢献ではない、と私は考えています。究極の社会貢献は、企業が最大限の利益を上げて税金を払うことかもしれません。
 
それはともかく、「プロボノ」的な働き方は、今後の企業経営にも多いに参考になると思います。日本が大変な局面に立たされている今こそ、経営者は自社の存在意義を真摯に見つめ直すべきではないでしょうか(@^^)/~~~