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「第三の選択肢」となったブラザーの家庭用プリンタ

投稿日時:2013/08/30(金) 15:30rss

暑かった夏も、そろそろ終わりを告げようとしています。経営者としては、この秋から年末までの戦略を入念に練りたいところですが、家庭用インクジェットブリンタ市場における「ブラザー工業」の戦い方がちょっとおもしろかったので、私なりの視点で解説してみたいと思います(*^_^*)
 
ご存じのように、家庭用プリンタの市場では、これまで「セイコーエプソン」と「キャノン」が“2強”と言われていました。そんな中で、ブラザーのインクジェットプリンタ『PRIVIO(プリビオ)』が、ことのほか好調な動きをみせているのです。
 


 
 
ブラザーが取った戦略は、「第三の選択肢」であることを徹底的に訴求すること! 自ら「三番手」であることをうたって、勝利を勝ち取った戦術はかなりユニークです(*^^)v
 
これまでは同社は、主にスモールオフィス向けの「ファックス付き複合機」に力を入れていたようですが、昨年(2012年)から、家庭向けの機種をすべて同一ブランドに統一しました。つまり、家庭用プリンタ市場に本気で参入しようと腹をくくったわけですね。
 
とは言うものの、 “2強”を相手に真正面から戦うのは、至難の業です。品質を訴えるのか、価格を訴えるのか、使い勝手の良さ、デザイン性、ランニングコストの安さ・・・どこをどう訴えれば、消費者の心に届くのか、試案のしどころです。
 
しかし、同社が取った戦略は、他ならぬ「第三の選択肢」があることを徹底的に訴求することだったのです(@_@。年末商戦では、「プリンタに、第三の選択肢」をキャッチコピーに、主に量販店で存在感を高めていきました。
 
選択肢が増えるのは、消費者にとってもうれしいことです。考えてみれば、安さや品質をアピールするより、自ら「三番手」を名乗り、「選択肢に入れてほしい」と訴えかける作戦は、消費者の心に届きやすかったと思いますが・・・この発想って、なかなか出てきにくいんじゃないでしょうか?
 
メーカーとして「商品の良さ」を訴えるのはカンタンですが、自社商品がお客さんから「どんな風に見えるのか」は、マーケット全体を俯瞰するような視点を持ち合せない限り、気づくことはできません。
 
たぶん、プリンタを買いに来たお客さんは「へぇ、ブラザーも家庭用プリンタ出してるんだ」というのが、正直なリアクションだったと思いますが(笑)、それを素直に戦略に活かせる同社のセンスは、評価に値するんじゃないでしょうか。
 
その証拠に、今では同社もすっかり“3強”の仲間入りを果たした感さえあります。最近は、「三番手」というポジションをきちんと確立した上で初めて、家族や運動会の写真など、身近な日常の光景を印刷したサンプル冊子を店頭で配布し、品質や使用感を訴え始めているようです。モノゴトには“順番”があるわけです。
 
競合に食い込むための秀逸な戦略のひとつとして、よかったら参考にしてください(@^^)/~~~


ボードメンバープロフィール

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石原 明(いしはら あきら)氏

僖績経営理舎株式会社代表取締役
AZ Collabo株式会社

ヤマハ発動機株式会社を経て、外資系教育会社代理店に入社。約6万人のセールスパーソンの中で、トップクラスの実績を収める。「セールス・マネージャー世界大賞」を受賞後、日本経営教育研究所を設立し、経営コンサルタントとして独立。中小企業から大企業まで、業種や企業の規模を問わず幅広いコンサルティング活動を行っている。毎年の講演回数は100回以上。ビジネスの発想力やマーケティング力を開発・育成する「新経営戦略塾」には1000人が登録し学び、全国延べ4500社が参加。
2万人の読者を抱えるメールマガジン『石原明の「新経営戦略塾」』や、独自の視点で経営を綴るブログ『石原明の経営のヒント』も執筆中。大人気Podcast番組『石原明の経営のヒント+(プラス)』は累計ダウンロード数6000万回を超えている。著書に、累計30万部を超え『営業マンは断ることを覚えなさい』(三笠書房)、『「成功曲線」を描こう。』(大和書房)、『トップ3%の会社だけが知っている儲かるしくみ』(KADOKAWA)などがある。

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